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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(オ)366号 判決 1953年11月26日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士盧原常一の上告理由について。

所論は、憲法七六条に反するという点もあるが、原裁判所がその良心に従わないで職権を遂行したことを認むべき証拠がないから、違憲の主張は、その前提を欠くものであり、その余の主張は、すべて原審裁判所の証拠の取捨、判断乃至事実の認定を非難するに帰し上告適法の理由となし難い。

上告代理人弁護士秦野楠雄の上告理由第一点について。

論旨は、単なる訴訟法違反の主張であつて、最高裁判所民事上告特例法一号乃至三号のいずれにも該当しないし、また、同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものとも認められない。(なお民訴三九一条参照)。

同第二点について。

原判決の引用した第一審判決の確定した事実によれば、訴外井手野武一は、昭和二二年一一月一日被上告人(当時未成年)の実母エンとの婚姻により右エンの戸籍に入り同月四日右訴外人は、右エンと共同せずに単独で被上告人の法定代理人親権者父と称して本件不動産を上告人に売渡す旨の公正証書による売買契約をしたというのである。そして、右売買契約当時施行されていた民法の応急措置法六条によれば、親権は父母が共同してこれを行うべきもので、親権者が未成年の子の財産に関する法律行為につきその子を代表する場合も同様でなければならないものと解するを相当とし、また、同法三条によれば、旧民法七二八条の規定は右措置法施行後はその適用を排除され、従つて、右の父母には継父母又は嫡母を包含しないものと解するを相当とするから(なお民法附則一六条参照)、いずれの点からしても、前記訴外人が単独で親権者父としてした売買契約は無効であるといわなければならない。されば、右契約を無効とした原判決は、結局正当であつて、論旨はその理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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